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2014年の第1四半期へと発売が延期されたRetroN 5ですが、その原因は製造時に判明した本体の不具合でした。一方、その間にも当初の予定になかったさまざまな改良が施されているそうで、その姿勢は評価したいところです。

そうした変更点や、さまざまな事情に触れているものとして、ここでは今年1月にゲーマーズ・ラウンジというサイトがHyperkinの社員であるポール・レン(Paul Leung)氏に行ったインタビューを要約する形でご紹介したいと思います。

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本体にはマルチタップの電源が付属するそうですね。これは、こうしておけば地域別に異なるパッケージを用意する必要がなくなるから、ということでしょうか。

RetroN 5の開発チームは世界のあちこちに分かれて作業しているので、電源もさまざまなものを使い分けていました。一般販売用のパッケージを用意する段階で分かったことですが、同梱の電源をマルチタップにするコストを試算したところ、予算内に納まったので、そうすることにしたのです。

その分、こちらのマージンは減ってしまうわけですが、ユーザーの便宜を考えると、その方が断然いいですからね。それにHyperkin社としても、悪いことばかりではありませんし。むしろ、どうして他社ももっとこういうことをしないのか、不思議に思うくらいです。

これによって、RetroN 5は本当の意味でのユニバーサルなゲーム機になるわけですね。外国旅行にもレトロゲーム機を持参したいという人には最適のマシンだと。

その通りです。わたしもカリフォルニアと香港を行き来する生活をしていますが、RetroN 5はどちらの土地でも使えるので重宝しています。それに、わたし自身がHyperkinに加わってから考えるようになったことですが、とにかくレトロゲームの名作をもっと手軽に遊べるようにしたい。そうなれば、今はささやかな規模のレトロゲーム業界も、もっと成長するでしょうから。

コントローラはBluetooth接続なわけですが、これはたとえば、Hyperkin以外のコントローラも使えるのですか。

それはまずありえないと思います。不可能ではありませんが。

もともと製品の構想時から、居間に置くような汎用のメディア機にはしないようにと、経営サイドからクギをさされていたんです。そのために、オンライン対応や、各種メディアの再生機能みたいな要素はすべて省かれました。ですので、Bluetoothの信号も暗号化されますし、特定のデバイスしか使えません。RetroN 5はオープンソースのハードではないということです。

複数プレイヤー対応のゲームでは、本体はいわゆるマルチタップ対応になるのでしょうか。たとえば、3人目と4人目のプレイヤーには、SNESのコントローラを本体に接続すれば、そのまま使えるのか、それとも別に、従来のマルチタップが必要になるのか、ということなんですが。

そのまま使えます。RetroN 5では、ゲームのROMカートリッジに関係なく、どのコントローラも使えるようになっていますので。

たとえばSNESの4人対応ゲームを遊ぶ場合、SNESのコントローラが2つ、ジェネシスのコントローラが2つという組み合わせでもプレイできますし、それ以外のどんな組み合わせでも大丈夫です。

RetroN 5ではシステムのアップデートが実施されると聞きましたが、それは本当でしょうか。だとすれば、どのような方法で実施されるのでしょうか。またそれは、いわゆる会社が提供するカスタマーサービスのかわりになるようなものでしょうか。

RetroN 5ではシステムのアップデートを断続的に実施しますし、会社としてマシンのサポートを打ち切るまでは続けます。

アップデート自体には、本体の後ろ側にあるSDカード端子を使います。テストの段階で、数千種類のROMカートリッジで動作確認を行いましたが、それでもまだ確認できていないものがあります。もし動作しないカートリッジが見つかった場合、本体のOSを変更して対応させることになります。また、ファームウェアのアップデートによって新機能を追加することもあるでしょう。

ビジネスの面では、アマゾンとの関係が気になります。アマゾンはRetroN 5の販売ページを出したり引っ込めたりを繰り返していますよね。それに販売開始の予定日もたびたび延期している。これは大量の注文が入ったからとか、そういうことなんでしょうか? 

そもそも、アマゾンとは実際になんらかのやりとりをなさっておられるのですか? たとえば事前注文がいくつ入っているのか、それはご存知なのですか? だとすれば、思ったとおりの需要が見込めると思われますか?

製品の完成度が75%に達したところで、とにかくクリスマス商戦に間に合わせたかったので、発売日の告知をあまりにも楽観的な時期に設定してしまったのです。

その後、製造工程に入った段階で、ピンコネクタのひとつに問題があることが判明しました。ピン同士の間隔がすこしばかり広すぎていて、動作に支障をきたす可能性があったのです。

問題が分かった時点で、もうクリスマスには間に合わないことがはっきりしました。そこで、システムの大幅な見直しを行い、あちこちの細かいところを、さらに手を入れました。おかげで、営業や広報の担当者にはひどい負担をかけてしまいましたし、何よりユーザーの皆様から大変なお叱りを受けてしまいました。

アマゾンに関しては、営業部の者から聞いた話ですが、先方の担当者との直接のやりとりもないそうです。つまり、これまでの情報は、すべてプログラムが自動的に出していたわけです。

事前注文についても、具体的な数は知りません。ただ、世界中から大変な反響をいただいていますので、われわれがどのくらいの数を予測したところで、それをはるかに超える需要があっても不思議ではないとは思います。なにしろ、ここしばらくはレトロゲームに対する関心が高まっていますから。

別に煽るつもりはないのですが、初回生産分の台数は需要をはるかに下回るでしょう。ただ、すぐに大量生産することも無理なんです。弊社は小さな会社ですし、ありあまる資金を持っているわけでもありませんので。

状態を保存する機能は、たとえば一時停止のできないゲームをプレイする場合にとても便利ですね。この機能について、くわしく教えていただきたいのですが。

たとえば、1回のゲームで複数のポイントをセーブできたりするんでしょうか。それとも、Wii Uのように1か所だけでしょうか? 本体のメモリ容量はどれくらいなのですか? セーブの数に制限はあるのでしょうか? メモリは拡張可能ですか? たとえば、USBメモリを挿せば拡張できたりするんでしょうか?

おっしゃる通り、RetroN 5の保存機能はじつに便利なものです。わたし自身、あれがなかったら、NESの「マーブル・マッドネス」はたちまち行き詰ったでしょうから。あのゲームをプレイされたことはありますか? ものすごく難しいんですよ。

RetroN 5では、どのゲームでも10か所までセーブポイントを設定できます。本体内のメモリ容量は今のところ非公表なのですが、容量が不足した場合は、SDカードが使えるようになっています。ただ、そのような問題はまず起こらないでしょう。なにしろ、大半のレトロゲームはせいぜい2~3Mバイトですから。

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発売延期は残念ではありますが、それでも賢明な判断でした。初期不良で回収騒ぎを起こし、そのせいで不良品とのイメージがついてしまって、結果的に失敗した、というケースは過去にいくつもありますし、そのようなことでRetroN 5に妙な先入観が付いてしまえば、それこそ残念なことになってしまいます。

そもそも、レトロゲーム機なのですから、一刻も早く出さなければならない、という性質のものでもないはずです。今はとにかく、事態を静観しつつ、待っているのが正解でしょう。


RetroN 5 Interview with Paul Leung from Hyperkin - The Gamers Lounge

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