今年の5月と、すこし前になるのですが、オーストラリアのレトロゲームサイトに、RetroN 5の開発元であるHyperkin社の幹部、デイビッド・ユー氏にインタビューした記事が掲載されていますので、以下に訳してみました。
Hyperkin社については分からないことが多い(wikipediaのエントリすらない)のですが、創業当時の状況などが明かされており、短いながらもなかなか興味深い内容になっています。
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まず、御社の成り立ちからおうかがいしたいのですが。
Hyperkin社は3人の兄弟によって設立されました。当初は「ダンス・ダンス・レボリューション」(DDR)のダンス・パッドを扱っていました。DDRの人気が最高潮だった頃です。
規模が大きくなるにつれて、お客様や取引先の小売店さんから、もっといろんな外部機器やアクセサリを出してみてはどうかと言われるようになったんです。それで、次第にそういう商品も扱うようになりました。
そういうものを売るとなると、ブランド名が必要だということで、Hyperkinという名称を使うようになったわけです。
会社として認知してもらうには、まず市場のニッチな分野を見つける必要がありました。いろいろ調べた結果、注目したのがレトロゲーム分野だったのです。需要を満たすような製品に乏しい、というのがその理由でした。
また、レトロゲームに関心があるのは昔のゲーム機とともに育った人々ですので、その世代に向けた商品開発をしようということになりました。
RetroN 5の一番のセールスポイントは何でしょうか。
どれが一番というのは難しいですね。なにしろ、RetroN 5は数多くの優れた機能を持っていますので。
ひとつ挙げるなら、HDMI出力と上位変換(アップ・コンバージョン)機能でしょうか。
困ったことに、昔のゲーム機は、高品位テレビだと画面表示がおかしくなってしまいます。そのために、ブラウン管を使った古いテレビを手放せないわけです。
もちろん、熱心なゲーマーの方で、ブラウン管のテレビをあえて使っている人が大勢いることは承知していますが、わたしとしては、単に自分が気に入っている昔のゲームを遊ぶためだけに、重いブラウン管のテレビを所持しなければならないというのは納得いきませんね。同じ部屋に薄型の高品位テレビを置いているわけですから。
RetroN 5なら、古いゲームも高品位テレビで普通に遊べます。これは個人的にも気に入っている機能ですよ。
画面出力に関しては、RetroN 5は最大720pまで拡大できます。また画面のアスペクト比は、ユーザーの側でも自由に設定できます。
それから、画面表示をよりなめらかに、明るくできるように、各種のフィルタやシェーダーも備えています。また、スキャンラインを好むユーザーのために、そういうものもフィルタとして選択できるようになっています。
とにかく、ゲームを最大限に楽しんでいただけるよう、なるべく多くのオプションを設定できるようにしたいですね。結局のところ、それがもっとも求められている要素だと思います。
高品位テレビの話題が出ましたが、いわゆる「光線銃」を使ったゲームについてはどうでしょうか。たとえばNESの「ダックハント」とかですが。
残念ながら、それは無理ですね。それはゲーム機というより、テレビ側の問題なんです。今のところ、高品位テレビに対応できる光線銃を開発する計画はありません。
重要なポイントとして、互換性の問題があると思います。RetroN 5でプレイできるカートリッジとはどのような種類のものなのでしょうか。
RetroN 5の5とは、スロットの数を指しているんです。それぞれファミコン、NES、ジェネシス、SNES,ゲームボーイ・アドバンスに対応しています。
さらに、メガドライブ、スーパーファミコン、ゲームボーイ、ゲームボーイ・カラーのカートリッジも使えます。
合計で9つのゲーム機に対応しており、それらの機種に対応するゲームを1台でプレイできるわけです。
わたしたちとしては、世界中のゲーマーの皆さんに、地域別の制約を気にすることなく、好きなゲームをプレイしてもらいたいと思っています。そのため、PALとNTSCのカートリッジはすべて使えますし、FXやCICのような特殊なチップを使ったゲームについても対応します。
すでに申し上げたことですが、わたしたちの目標は、100%の互換性を確保することです。そのために、レトロゲーム界の著名な人々に動作チェックをお願いしています。こうした方々は極めてめずらしいカートリッジを所持されていますので。
それでも、出荷の時点ではいくつか正常に動作しないゲームがある可能性は十分にあります。対策としては、動かないことが判明したゲームについては、ファームウェアのアップデートで対応していきたいと思います。最新のファームウェアは弊社のサイトよりダウンロードできる予定です。それから、なんらかの新しい機能もアップデートという形で反映させたいと思っています。
ゲーム機の研究開発というプロセスに興味があります。RetroN 5のような製品を市場に投入するまでにはどれくらい時間がかかるのですか。
残念ながら、弊社の研究開発については何もお話しできることはありません。競合他社の存在を考えると、そうした面を公表するのは得策ではないというのがその理由です。
ひとつ言えることとしては、製品を手がけるにあたっては、いろいろ調べて、試作品を作り、テストを重ねて、最終的に生産段階に入るまで、あれこれと計画を立てることになります。
また、あちこちの見本市やイベントに出展しては、ゲーマーの皆さんとお話しする機会を持ち、たくさんのご意見をいただいていることも付け加えておきましょう。
それから、ソーシャルメディアも活用しています。ユーザーの皆さんと直接交流が持てるということで重要なツールですので。
そうしたこともまた、製品を作るうえでの参考にさせていただいています。
出荷から在庫の供給、流通についてはいかがでしょうか。どれも重要な要素だと思いますが。
まだ製品を開発している段階ですので、具体的な発売日は設定していません。ひとまずは、2013年夏といっておきましょう。
ただしこれは、あくまでアメリカでの話です。他の地域については、何もはっきりしたことはお話しできないのですが、何か決まりましたら、弊社より改めて告知します。
ひとつ強調しておきたいのですが、RetroN 5が欲しいけれども入手できないという事態は、できるかぎり無いようにしたいと、弊社としては考えています。
最後の質問ですが、あなた自身はレトロゲームの愛好者なのですか。ニンテンドウ、セガ、アタリ、コモドールといろいろありますが、いかがでしょう。
それはうれしい質問ですね。
優等生的な答えになってしまいますが、わたしはどんな機種のゲームでも好きです。どんなものでも一度はプレイしてみる価値があると思っています。
Hyperkin社で働いていると、最新のゲームに加えて、昔プレイして気に入っていたゲームを改めてプレイするという機会にたびたび恵まれるのは確かです。
そのことを踏まえて言うと、わたしの場合、レトロゲームに関してはSNESがとにかく好きですね。SNESこそ任天堂が出した最高のゲーム機だというのが、わたしの持論なんです。
いちばん最近だと、ミッドウエスト・ゲーミング・クラシックというレトロゲームのイベントで、NESの「マイク・タイソン・パンチアウト」を入手できたのが思い出になっています。普通の「パンチアウト」ではなく、マイク・タイソンが登場する方です。同じ「パンチアウト」でも、タイソンと対戦できるかどうかは決定的な違いですよ。
どうもありがとうございました。
Interview with Hyperkin: David Yu talks about the RetroN 5 | Australian Retro Gamer